インフルエンザ――検査のタイミングと治療薬の種類
2023.12.01
ここ数年は、新型コロナの陰に隠れていましたが、今年の冬はインフルエンザが流行しています。
冬のこの時期に熱が出たり、喉が痛くなったりしたら「インフルかな?」と思うでしょう。ただ、すぐに検査を受けに行ったらハッキリと診断されなかった……なんて経験、ありませんか? どのタイミングで検査を受けるのがいいのか、また、インフルエンザの治療薬にはどんなものがあるのか、ご紹介します。
インフルエンザの流行状況
インフルエンザは、その患者数を把握するために、全国約5000か所の小児科・内科で、その医療機関を受診した患者数を週ごとに報告されています。
東京都が公表した「インフルエンザ情報」によると、下記のグラフのように、すでにインフルエンザの流行がはじまっており、例年よりも早い時期から定点当たりの患者報告数が増えています。
インフルエンザの検査を受けるタイミングは?
発熱などの症状が出て、「インフルエンザかな?」と思ったら、発症の12~48時間以内にクリニックを受診して、検査を受けることをおすすめします。
なぜなら、現在広く流通しているインフルエンザの検査キットは、精度の高いものであっても、ある程度、ウイルス量が増えなければ正しく診断できません。だから、正しく診断するには発症から12時間以降が望ましいのです。
一方、なぜ「48時間以内」なのかというと、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に服用開始することで効果が期待できるからです。逆に48時間以上過ぎてから服用を開始しても治療効果はほとんどないと言われています。
「感染」と「発症」の違い
ところで、「発症の12~48時間以内」と言われても、「発症っていつ?」とわかりにくいかもしれません。
発症とは、病気の症状が現れることです。
ちなみに、感染は、ウイルスなどの病原体が体内に侵入して増殖することです。
感染したらすぐに発症するわけではなく、だいたい潜伏期間が1~3日あって、発症すると言われています。
発熱、咳、喉の痛み、倦怠感といった症状が出たときが、発症のタイミングです。それでも「いつ」と明確にはわかりにくいかもしれませんので、自分が「発症した」と思ってから24時間後ぐらいを目安にすると、いちばん正しく診断されやすいと思います。
ただ、脱水症状があったり、激しい体の痛みがあったり、症状が重たい場合には、がまんせずにすぐに受診してください。
5種類の抗インフルエンザ薬
現在、主に使われている抗インフルエンザ薬は、次の5種類です。
これらの薬を服用することで、発熱期間が約1日短縮されると言われています。
●「タミフル(一般名:オセルタミビル)」
カプセル剤で、成人の場合、1回1カプセルを1日2回、5日間服用します。
インフルエンザの治療薬として最も臨床実績が多いのが、このタミフルです。
●「リレンザ(一般名:ザナミビル)」
これは、吸入薬です。
成人も小児も、1日2回、5日間、専用の吸入器を使って吸入します。
吸入薬なので、薬を直接気道に届け、上気道(鼻からのどまで)でのウイルスの増殖を抑えることができます。ただし、喘息などの呼吸器に病気のある人は、発作を誘発することがあるため注意が必要です。
●「イナビル(一般名:ラニナミビル)」
こちらも吸入薬です。確実に吸入することができれば、1回の吸入で治療が完結できることが特徴です。粉末を吸入するタイプのほか、ネブライザ吸入器を用いて吸入するタイプもあります。ただし、リレンザ同様に呼吸器に問題のある人は注意が必要です。
●「ラピアクタ(一般名:ペラミビル)」
点滴薬です。1回の点滴で、タミフルを5日間内服したのと同等の効果があると言われています。
経口摂取が難しい患者さんや、嘔吐や下痢があって十分な薬剤の消化が難しい方、入院が必要な方などに用いられます。
●「ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)」
錠剤で、2018年に発売された、抗インフルエンザ薬のなかでは新しい薬です。
インフルエンザウイルスの増殖を抑えることは他の薬と同じですが、その作用機序は異なり、1回の服用で治療が完結します。
ただ、薬が効きにくい「耐性ウイルス」の問題があり、特に12歳未満の子どもに耐性ができやすく、日本小児科学会は5歳未満の子どもには「積極的には推奨しない」、6歳から11歳の子どもには「慎重に判断」を、としています。
◎参考
東京都感染症情報センター「東京都 インフルエンザ情報」2023年11月24日発行
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/assets/flu/2023/Vol26No11.pdf
日本小児科学会「2023/24シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20231122_influenza.pdf