「運動習慣」「体力年齢」は将来の若さをつくるのか?

2020.10.23

握力が弱い、または歩くスピードが遅いと、将来的に要介護状態になるリスク、認知症になるリスク、寿命・健康寿命が短縮するリスクが高まる――。
このことは、すでに十分なエビデンス(科学的根拠)が出ているようです。
9月25日から27日の3日間にわたって開催された第20回日本抗加齢医学会のなかで報告されました。

アンチエイジングのガイドラインを作成中

日本抗加齢医学会は、アンチエイジングを医学的に研究する学会です。
この学会で、アンチエイジング医学に関するガイドラインを作成しようという動きがあり、食事、運動、サプリメント、性ホルモン(テストステロン、エストロゲンなど)の4つの分野について、現時点での報告が行われました。運動分野について報告したのが、熊本大学整形外科学講座の宮本健史先生です。

運動分野については、
① 運動を行うことが本当にアンチエイジングに良いのか?
② 現在の運動能力の違いが将来に影響するのか?
という大きく2点について、国内外の医学論文からエビデンスを調べた結果が報告されました。

運動は本当にアンチエイジングになる?

運動は健康にいい。そのことは誰もが知っています。
当然、アンチエイジングにも効果があるのでは、と思いますよね。
結果はというと、やっぱり運動を行うことはアンチエイジングにつながるとのことでした。特に過去の研究結果からエビデンスが出ていたのが、「運動は骨密度を上げる(特に女性)」ことと、「運動で認知症の発症や進行を防止できる」こと。
骨を丈夫に保つことも認知機能を保つことも、健康寿命を延ばすために欠かせません。その両方において、運動は「強く推奨される」とのことでした。

握力が弱い人は要介護になりやすい?

もう一つの命題が、「現在の運動能力の違いが将来に影響するのか」です。
これについては、
① 骨
② 要介護化
③ 認知症の発症
④ 寿命・健康寿命の発症
という4つに差が出るかどうかが報告されました。
結論から言えば、どれも影響を及ぼしていました。

まず「骨」との関係では、加齢に伴って筋量や筋力が減ることを「サルコペニア」と言いますが、サルコペニアと骨粗しょう症は併存しやすいこと、サルコペニアと骨折も関連があることはすでに証明されているそうです。また、握力と骨密度にも関連があるとのことでした。

次に、要介護化との関係では、65歳以上の4,341人を2年間追跡調査した研究が紹介されました。この研究では、「歩くスピードが遅い」「握力が弱い」「疲れがある」「エクササイズも運動もしていない」「体重減少がある」のいずれにおいても「はい」の人のほうが要介護状態になるリスクが高く、特に、「歩くスピードが遅いこと」と「握力が弱いこと」が将来の要支援・要介護状態になるリスクを有意に増加させていたそうです。

歩くスピードが遅い人は認知症になりやすい?

運動能力と将来的な認知症の発症の関係についてもエビデンスがあります。
「バランス能力の違い」「歩行速度の違い」「サルコペニアの有無」によって将来的な認知症の発症に差があることは、いずれももっとも高いレベルのエビデンスがあるそうです。

また、運動能力と寿命・健康寿命の関係についても、
・歩行速度、握力、椅子からの立ち上がり時間の違いにより、寿命の差がある
・歩行速度、握力により、心血管系疾患による寿命に差がある
・サルコペニアの有無により、寿命に差がある
ことがもっとも高いレベルのエビデンスをもって証明されているそうです。

今の体力、自信がありますか?

このように運動は、今の健康はもちろん、将来的なアンチエイジングにも役立つことが証明されています。
毎日、歩いていますか?
運動を習慣的に行っていますか?
ふだん体を動かしていない人は、できることからはじめましょう。
ただし、膝や腰、股関節などに痛みのある人は、無理のない運動を行うために、一度整形外科で相談することをおすすめします。

また、今の運動能力が将来に影響するということは、今の自分の運動能力がどの程度なのか、気になりますよね。
メディカルプライム高輪では、2020年11月8日(日)にライザップによる「体力年齢診断会」を行います。握力、片足立ち、椅子からの立ち上がり、座った状態での前屈、前後ステップという5つの簡単な体力テストから、現時点での体力年齢がわかります。

詳しくは、下記をご覧ください
https://medicalprime-takanawa.com/phelophepa/434

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